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東京地方裁判所 昭和46年(ワ)7465号 判決

原告 光成鋼業株式会社

右代表者代表取締役 八幡清治郎

右訴訟代理人弁護士 長尾憲治

被告 柴田昇彦

〈ほか四名〉

主文

原告に対し、被告柴田昇彦、被告柴田栄次および被告浜野順子は別紙目録記載の土地の持分各一二分の三につき、被告前田トシ子および被告前田努は各自同持分一二分の三につき各所有権移転登記手続をせよ。

訴訟費用中原告と被告柴田昇彦、被告前田トシ子、被告前田努および被告浜野順子との間に生じた部分は原告の負担とし、原告と被告柴田栄次との間に生じた部分は同被告の負担とする。

事実

原告は「主文第一項と同旨および訴訟費用は被告らの負担とする」との判決を求め、請求原因として次のとおり述べ(た。)証拠≪省略≫

一(一)  別紙目録記載の土地(以下本件土地という。)は、もと訴外柴田福蔵の所有であったが、同人は昭和二三年四月三日死亡した。

(二)  そのため本件土地は、右福蔵の相続人である被告柴田昇彦、被告柴田栄次、訴外前田福雄、右福蔵の二女浜野保子の代襲相続人である(同人の二女)被告浜野順子が、それぞれその一二分の三を各相続した。

二  訴外大成機械株式会社(以下大成機械という)は、昭和二五年頃、前記各相続人の代理人でありかつ本人である被告柴田昇彦から、本件土地および地上に存した木造トタン葺平家建の建物一棟を、代金二一二、〇〇〇円で買い取り、所有権を取得し、かつその頃本件土地の引き渡しを受けてこれの占有を開始した。

(なお、その後間もなく右地上建物は取り毀し、同訴外会社において地上に木造の建物を建築した。)

三  その後昭和三三年一〇月頃、原告は大成機械から、本件土地を右新築にかかる建物と共に、代金五一五、九六〇円で買い取って所有権を取得すると共に、その引き渡しを受けてこれを占有し今日に至っている。

(なお、原告は昭和三八年頃右地上建物を取り毀し、同三九年二月頃新たに建物を建築してこれを使用している。)

四  被告柴田昇彦は、前記昭和二五年頃大成機械に対して本件土地および地上建物を売り渡した際、同会社が本件土地を他に譲渡した場合においては中間を省略し、同会社の指示する第三者に登記する旨を約した。

そして大成機械は前記昭和三三年一〇月頃原告に対して本件土地を地上建物と共に売り渡した際、所有権移転登記を中間者たる大成機械を省略してなすことに同意した。

五  以上の結果、被告柴田昇彦、被告柴田栄次、訴外前田福雄被告浜野順子がそれぞれ前記各共有持分一二分の三について原告に対し所有権移転登記手続をなすべき義務あるところ、前田福雄は昭和四〇年六月二〇日死亡したため、同人の持分一二分の三についての所有権移転登記義務は相続によりその妻である被告前田トシ子および子である被告前田努によって不可分的に承継された。

六  よって原告は被告らに対し右各登記義務の履行を求める。

被告柴田昇彦は請求棄却の判決を求め、請求原因事実を認めた。

被告前田トシ子および被告前田努は本件口頭弁論期日に出頭しないが、その提出にかかる答弁書には別紙のとおりの記載がある。

被告柴田栄次は公示送達により、被告浜野順子は郵便による適式の呼出をそれぞれ受けながら本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面の提出もしない。

理由

原告主張の請求原因事実は被告柴田昇彦との間で争いがない。また、被告前田トシ子、被告前田努との間でも一ないし三項のうち一項(二)の事実を除いて争いがなく、右事実は、≪証拠省略≫によって、これを認めることができる。そして四項の事実は同被告らにおいて明らかに争わないから自白したものとみなす。

つぎに、被告浜野順子は民事訴訟法第一四〇条により、原告主張の事実を自白したものとみなされる。

被告柴田栄次との関係において、原告主張の事実は、≪証拠省略≫を総合してこれを認めることができる。

そして以上の事実によると原告の被告らに対する本訴請求はいずれも理由があるから、これを認容すべきである。

ところで、≪証拠省略≫によると、被告柴田栄次を除くその余の被告らは本件各持分移転登記手続をなすことにはなんら異存なく、従って原告において右手続に必要な書類を具備して協力を求めれば、本訴提起をまつまでもなく、本訴と同一の目的を達し得たのであり、(被告柴田昇彦は請求棄却の申立をしているが本件持分移転登記手続を任意になすことを拒絶する趣旨ではないと認められる。)同被告らに対する本訴提起は所在不明の被告柴田栄次に対する訴を提起するに当り、便宜上、併せてなしたものと認められるのであって、これに要した訴訟費用は民事訴訟法九〇条前段の「其ノ権利ノ伸張ニ……必要ナラサル行為ニ因リテ生シタル訴訟費用」に該当するものというべく、従って原告と被告柴田栄次を除くその余の被告らとの間に生じた訴訟費用は同法条により全て原告の負担とし、原告と被告柴田栄次との間に生じた訴訟費用は同法八九条により同被告の負担とし、主文のとおり判決する。

(裁判官 佐藤安弘)

〈以下省略〉

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